ワークマンが見つけた「第3の市場」とは? 暑さ・寒さの次に狙う“寒暖差”と独自商品戦略

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暑さ対策、寒さ対策に力を入れてきたワークマンが、新たな市場を見つけました。

それが「寒暖差」

2026年10月7日(水)、東京・新宿住友ビル三角広場で開催された「2026年秋冬期 異常気象対策新製品発表会」の内容をまとめておきます。

暑さでも寒さでもない。ワークマンが見つけた「寒暖差」

これまでワークマンは、冬の厳しい寒さに対応する防寒ウェアや、夏の猛暑を乗り切る暑熱対策ウェアを開発してきました。

ところが、土屋専務が今回強調したのは、暑さでも寒さでもない「1日の寒暖差」です。

例えば、冬の朝。

気温0℃の屋外を歩いて駅に向かい、暖房の効いた満員電車に乗ると、車内は25℃を超えることもあります。

寒さに備えて厚着をしていると、今度は暑くて汗をかいてしまう。でも、混雑した車内では上着を脱ぐのもひと苦労です。

こんな日常の困りごとに、ワークマンは新たな市場を見いだしました。

土屋専務は、1日の寒暖差への対応こそが「本命」だと説明します。

5℃の寒さも30℃の暑さも。新製品「エックスシェルターΣ」

この寒暖差対策の切り札として登場したのが、「エックスシェルターΣ(シグマ)」です。

発表会のスライドには、「5℃の寒さも、30℃の暑さも一層の生地で対応が可能」との文字が。

なんと、25℃もの温度差に対応するというのです。

その秘密は、「断湿」「断熱」「断光」という3つの技術。

土屋専務によると、1日の気候変動に対応するため、25の機能を盛り込んだといいます。

目指したのは、暑さも寒さも意識しない「無感覚」の快適さです。

寒い屋外でも暖かく、暖房の効いた電車内でも暑さを感じにくい。

そんな、これまでの防寒着とは異なる発想で開発されています。

土屋専務は、将来ワークマンの看板商品になるのではないかと、大きな期待を寄せていました。

「天候は選べない。衣料は、選べる」

今回の発表会で掲げられたメッセージが、「天候は選べない。衣料は、選べる」です。

猛暑、豪雨、厳しい寒さ。

土屋専務は、異常気象がもはや異常ではなく、日常的に起こるようになっていると説明しました。

実際、雨が続いた際には、レインウェアやレインシューズ、撥水シューズなどが非常によく売れたそうです。

天候は変えられなくても、着るものは選べます。

そこにワークマンのビジネスチャンスがあるというのです。

「ワークマンでしか買えない」が強み

新製品の説明に加え、土屋専務が語ったのがワークマンの事業戦略です。

一般向け商品が増える一方で、従来の作業服ユーザーも大切にしていく。そのために力を入れているのが、「機能」「スタイル」「価格」の3つです。

機能も、デザインも、価格も追求

まずは「機能」。

エックスシェルターのような独自技術を、アウトドアだけでなく、作業現場でも使える商品へ展開します。

次に「スタイル」。

機能性だけでなく、かっこよさも追求。EXILE TAKAHIROさんを起用したCMなどを通じて、デザイン性の高い作業服にも力を入れています。

そして「価格」。

こちらは、具体的な数字が紹介されました。

従来、上下4,400円で販売していた作業服を、なんと3,400円に値下げしたというのです。

値下げ幅は1,000円。約23%もの値下げです。

その秘密は、生産方法の見直しにありました。

ワークマンが生地やファスナー、ボタンなどを直接調達。工場には加工を依頼し、年間を通じて生産ラインの稼働を保証する方式に変更したそうです。

これにより製造コストを削減。その成果の大部分を価格に還元しています。

他社では買えないから、ワークマンに行く

土屋専務の説明で印象的だったのが、「ワークマンでしか買えない商品」を作るという考え方です。

ホームセンターや他の作業服専門店では手に入らない商品がある。

だから、お客さんはワークマンに足を運びます。

単に安いだけではありません。

機能性、デザイン、価格。それぞれで独自の価値を提供し、ワークマンを選ぶ理由を作る。

これが、ワークマンの競争力につながっています。

今回発表されたエックスシェルターΣも、独自の技術で新しい需要を生み出そうとする取り組みの一つといえそうです。

肌着が毎年50%成長! でも競合も多い

ワークマンが新たな成長分野として力を入れているのが、機能性肌着です。

土屋専務によると、肌着関連の売り上げは毎年約50%のペースで成長。売上構成比は約5%に達しているといいます。

さらに、将来的には約20%まで引き上げることを目指しています。

代表的な商品の一つが、メリノウールの肌着です。

メリノウールは登山などでも使われる素材で、汗冷え対策に役立つ特性があります。

原料価格は、この1年で約30%も上昇。

それでもワークマンでは、上下それぞれ1,900円という販売価格を維持しているそうです。

販売数量が大きく伸びていることが、価格維持につながっていると説明しました。

さらに、10月9日からはワークマンとして初めて、肌着のテレビCMを展開します。

ただ、ここで少し気になることもあります。

例えば、疲労回復ウェア「メディヒール」。

リカバリーウェアや機能性パジャマは、すでに多くのメーカーが展開しています。

ワークマンは手頃な価格で差別化していますが、これだけライバルが多い市場で、今後も成長を続けるのは簡単ではないのではないでしょうか。

価格だけで勝負するとなると、競合他社が値下げしてくる可能性もあります。

その点、独自の技術を持つエックスシェルターは、ワークマンならではの強みが際立つ商品だと感じます。

もちろん、エックスシェルターにも競合する防寒ウェアはあります。それでも、暑さと寒さの両方に対応するという独自の切り口は、価格以外の理由でワークマンを選ぶきっかけになりそうです。

エックスシェルターの原点は「防災」

実は、エックスシェルターの開発には、日本赤十字社との防災に関する取り組みがあります。

避難所では、冷暖房が十分に使えないこともあります。

夏は熱中症、冬は低体温症。どちらも命に関わる問題です。

そこでワークマンが開発しているのが、極端な暑さや寒さにも対応するウェアです。

発表会では、外気温45℃を想定した暑熱対策ウェアや、マイナス15℃、マイナス30℃という極寒環境を想定した「エックスシェルターΩ(オメガ)」も紹介されました。

目指しているのは、普段着ている衣服が、いざというときの防災用品にもなること。

特別な防災用品を買わなくても、日常の備えになるという考え方です。

「冬はダウン」の常識が変わる? 注目した薄手の防寒ジャケット

今回の発表会で、個人的に気になった商品があります。

それが「エックスシェルター断熱Ω PREMIUM 2WAYミドルジャケット」(税込4,990円)。

冬の防寒着といえば、ダウンジャケット。そんなイメージを持っていました。

ところが、このジャケットはダウンのようにぷっくりしていません。見た目はすっきり。それでいて、手に取ると軽いのです。

しかも、約マイナス15℃という極寒環境での実証をうたっています。

その秘密は、2つの異なる特殊断熱素材を組み合わせた「超断熱」技術。

従来のように厚い中綿で暖かさを確保するのではなく、薄い断熱素材を使うという発想です。

これなら、ダウン特有の着ぶくれが気になる人にもよさそう。

寒さ対策には厚手のダウンが必要。そんな常識が、これから変わるかもしれません。

しかも価格は4,990円。

エックスシェルターが、ワークマンの次の看板商品になるかもしれない。土屋専務の話を聞いて、その可能性を感じた一着でした。

エックスシェルター、名前がわかりにくいのが惜しい!

一方で、エックスシェルターにも気になる点があります。

それは、シリーズのネーミングです。

エックスシェルターには、α(アルファ)やΣ(シグマ)、Ω(オメガ)など、ギリシャ文字を使ったシリーズがあります。

社内では違いが浸透しているのかもしれません。でも、消費者の立場では、名前を聞いただけでは何が違うのか、なかなかわかりません。

どれが寒さに強くて、どれが寒暖差に対応するのか。自分にはどれが必要なのか。

せっかく特徴のある商品なのだから、ユニクロの「ヒートテック」「エアリズム」のように、もう少し機能が伝わる名前だったらよかったのに、と感じました。

ワークマンでしか買えない商品だからこそ、その魅力がひと目で伝わる工夫も欲しいところです。

エックスシェルター4種類の比較表

種類特徴・機能主な用途
断熱α(アルファ)ムレにくさと軽さに優れた丈夫な次世代断熱ウェア日常使い・軽さ重視
断熱β(ベータ)優れた断熱性と動きやすいストレッチ性を兼ね備えたウェア。タウンユースしやすいアイテムが多数街着・普段使い
快適断熱Σ(シグマ) NEW気候変動リスク対策に有効な25の機能を搭載。外気温30〜5℃までの寒暖差に対応1日の寒暖差対策
断熱Ω(オメガ) NEW北海道根室市で実証。マイナス15〜マイナス30℃に対応する極寒向けウェア極寒地・厳冬期
出典:ワークマン 2026年秋冬期新製品発表会 配布資料。用途は資料の機能説明をもとに整理

ワークマンの次の成長を支えるのは「独自性」?

暑さ対策、寒さ対策、そして寒暖差対策へ。

ワークマンの商品開発は、さらに先を見据えています。

土屋専務は、将来的にはマイナス30℃からプラス45℃まで、1着で対応できるウェアを実現したいと語りました。

もちろん、まだ実現したわけではありません。

しかし、今回のエックスシェルターΣは、その理想に向けた新たな挑戦です。

価格の安さは、ワークマンの大きな魅力です。

でも、他社でも似た商品が買えるなら、価格だけで選ばれることになります。

一方、他社にはない機能を持つ商品なら、「これが欲しいからワークマンに行く」という理由になります。

そう考えると、ワークマンの次の成長を支えるのは、安さだけではなく、エックスシェルターのような独自性の高い商品なのかもしれません。

「天候は選べない。衣料は、選べる」。

ワークマンが見つけた「寒暖差」という新市場。これからの展開に注目したいと思います。

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